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食後、急激に眠くなる!?

井上 肇

聖マリアンナ医科大学 特任教授

井上 肇(いのうえ はじめ)

症状
食後、急激に眠くなり、だるくなる

「食事の後、ものすごく眠くなったり、だるくなったりする。」倦怠感の経験はないでしょうか? 誰でもお腹がいっぱいになると、多少の眠気は出るものです。

多少の眠気は正常な反応ですが、中には耐えられないくらいの睡魔に襲われ、身体を横にして仮眠しなければ日常生活に支障をきたすほどの人もいます。このような重い症状が出ている場合には、病気につながることもあるので注意が必要です。

原因
糖質の取り過ぎによる一過性の過血糖

自称健康と思っているヒトが食後急激に眠くなるのは、糖質の取り過ぎ(過食)による高血糖のサインである可能性もあります。簡単に言うと「食事で摂取された糖質を処理しきれず、その結果血糖が急激に上昇してしまう状況」、過血糖(高血糖)状態です。

通常私たちは食後、血糖は緩やかに上昇します。しかし、通常はインスリンというホルモンが正常に分泌され、2時間程度で通常血糖にもどります。

しかし、こう言った調節機能がうまく働かなくなる、あるいは追いつかない状態になると食後過血糖を引き起こし、急激な眠気(倦怠感)の他に、精神的に不安定になるなどの症状を引き起こすことがあります。

食べ過ぎによる血糖値の上昇

食べ過ぎによる血糖値の上昇

食後に異常なほどの強い眠気を感じる、という場合は糖代謝異常に罹患しているか健康人であれば食べ過ぎ(一気喰い)の可能性があります。食物中の炭水化物はブドウ糖に消化されて吸収されます。そして血液中に移行すると、血糖として存在します。個人差は大きいのですが、一度にたくさん食事をすると、上昇する血糖に身体が追いつかず(インスリン分泌が追いつかず)要するに “過血糖”の症状が起こりやすくなります。

血糖値の調節とその異常

前半にもちょっと触れましたが通常血糖が上がると膵臓から血糖を低下させるインスリンという(血液中のブドウ糖(血糖)を細胞の中に取り込ませて糖の利用を促進する)ホルモンが分泌されて、ブドウ糖を組織で効率的に利用できるように働きます。通常の食事による血糖の上昇であれば、インスリン分泌能には余裕があるので上昇した血糖を処理できます。しかし極端な過食で一気に血糖が上昇すると、より一層のインスリンが要求されてしまいます。この時にインスリンの分泌が追いつかないと過血糖という状況が持続します。

健康な人は普通このような状態になることはないと思われていましたが、近年の研究でペットボトル症候群という病態が知られるようになりました。これはスポーツなどで汗をかいて脱水を補正するつもりで、清涼飲料水やスポーツドリンクを「がぶ飲み」して、さらに発汗するという状況が繰り返されることで起こる過血糖状態です。この病態は、何も清涼飲料水に限らず、どか食い、糖質の多い食品の大食いでも発症します。

この状況が続くと、血糖に相応するインスリンの分泌が追いつかず(インスリン分泌不足)、病態として糖尿病性ケトアシドーシスの発症(すなわちペットボトル症候群)を引き起こします。一度に食べる食事の量がつい多くなってしまう、という人は要注意です。

インスリンの働きが弱まることが眠気の原因?

膵臓から分泌されるインスリンは、細胞に血液中のブドウ糖(血糖)を効率よく利用(吸収)できるような手助けをして(すなわち血糖を細胞内に輸送させる)、血糖を下げることのできる身体の中で唯一のホルモンです。

乱暴な比喩ですが、「人間は一生に食べられる食事の量は決まっていて、その総量に相応するインスリンの分泌能力も決まっている。だから、それを超えて食べてしまうと膵臓のインスリン分泌能力が息切れしてくる」、という解釈も、ひとつの考えかたです。そうなると、持続的過血糖により、倦怠感、異常な体重減少、口渇といった症状を常に訴えるようになります。重症化すると昏睡まで引き起こします。まだ20~30代の若年層が食後に倦怠感を訴えるようであれば、過食による膵機能の疲弊ということも考えましょう。

放っておくと…
食べ過ぎは膵臓の疲労を招く

暴飲暴食は過血糖を引き起こし、膵臓を疲労させ、次第にインスリンの分泌や働きが悪くなり、糖尿病になる恐れがあります。

膵疲労から糖尿病へ

インスリンの分泌が低下したり、インスリンの働きが弱ってくると、細胞内に血糖(ブドウ糖)を取り込めず細胞がエネルギー不足(飢餓状態に)になります。いくら食べて満腹になっても、実は細胞にエネルギーが届かないので、細胞は常に空腹の状態になります。そうするとまた食べるの繰り返し。こうなると代謝のバランスが崩れます。それが、糖尿病性ケトアシードシスの症状となって現れ、食後の強い眠気や倦怠感の原因にもつながります。

もし食後に強い眠気を感じ、過食に心当たりがあるならば、まず、自分が糖尿病にかかりやすいかどうかをチェックしてみましょう。

糖尿病になりやすいかを調べるチェックリスト

□(1)妊娠中に血糖値が高いといわれたことがある □(2)家族や親族に糖尿病の人がいる
□(3)夕食時間が遅く、極端に多く食べる □(4)食べ過ぎている
□(5)太っている □(6)脂っこいものが好き
□(7)甘いものが好き □(8)お酒をたくさん飲む
□(9)おやつを必ず食べる □(10)ドリンク剤をよく飲む
□(11)野菜や海藻類をあまり食べない □(12)朝食は食べない
□(13)食事時間が不規則  
□(14)運動不足である □(15)ゆっくり休めない
□(16)ストレスがたまっている  
□(17)40歳以上である  

以上の項目は、厚生労働省が発表している、糖尿病にかかりやすいかどうかのチェックリスト。この項目から、からだエイジング監修ドクターが誘発度を解析してみました。

項目中、①と②があれば、糖尿病になるリスクが極端に高くなります。③~⑧は糖尿病患者に多く共通している事柄。⑨~⑬は、③~⑧ほど顕著に関係していませんが、結局は摂取エネルギーが多くなります。⑭~⑯はリスクファクターにはなりますが、これだけで糖尿病になることはありません。最後の⑰は、①~⑧がいくつか当てはまった上で、⑰であれば要注意。

そういった理由から、③~⑧が2つ以上、⑨~⑬で3つ以上、⑭~⑯で1つ以上あると、糖尿病に罹るリスクは高いといえるでしょう。

また、猛烈な眠気を度々感じる場合は、糖尿病だけでなく他の病気も併発している可能性もあります。どの程度の眠気をどんなときに感じるか、普段どのような食生活をしているかなどをチェックして、医師に相談する必要があります。

糖尿病とうつ病の関係

普段から甘い物や炭水化物を口にすることが多い人は、食後の眠気の他に「疲れやすい」「食生活は変わらないのに急に太りだした、痩せた。」などの症状が現れた場合、要注意です。なぜなら、耐糖能異常や糖尿病は症状に乏しいため、かなり進行するまで放置され、また健康診断の結果のみでは判断つかないこともあります。

また、改まった検査もそれなりの準備と時間がかかるため面倒なところです。しかし耐糖能異常が見つかり糖尿病と診断されると、合併症を予防するためにこれ迄の生活習慣を改めねばなりません。

なぜなら高血糖状態が続くと、血液もベタベタになり、動脈硬化を助長し、血管が詰まりやすくなるため、心筋梗塞、糖尿病性網膜症、腎障害、勃起不全などの合併症が起こりやすくなるからです。

何十年もの生活習慣を一気にガラリと変えると、そのストレスで精神が不安定となり、急激な眠気などの各種の随伴症状も重なり、うつ病を合併することもあります。

対策
炭水化物・糖質をほどほどに

パンや白米などの炭水化物は糖質が高いため、血糖値を急激に上げてしまいます。精製された小麦や砂糖は特に血糖値を上げやすいため、なるべく摂取を控えて、肉や魚、豆などのタンパク質や野菜を多く取ることが大切です。特に昼食時と夕食時に糖質を抑えるのが効果的です。

また、間食には砂糖がたっぷり入ったチョコレートやクッキーなどは控えて、ナッツやチーズなどを食べるようにしてください。食後の眠気の原因が高血糖だと疑われる場合は、このような糖質制限を2週間ほど続けてみましょう。

量より質で食生活の改善を

40歳以降、1日の摂取カロリーの標準的目安は、2,000キロカロリー前後だといわれています。しかし、食後、強烈な眠気やだるさを感じる人は、過食の可能性が。まずは医療機関で自分の血糖値を測り、医師に診断してもらいましょう。

そして、肥満気味の人は、腹八分目の1,600キロカロリーくらいになるよう食事に気をつけてください。人間は美味しくて質の良い食べ物を摂ると、満足感を得やすい傾向があります。安く大盛りの牛丼を食べるより、質の良いステーキを少量食べるようにすると、過食防止に。そして、会話を楽しみながら、夕食だったら1時間くらいかけてゆっくり食べると、血糖値の急激な上昇を防げます。

適度な運動で体質改善

ウォーキングなどの適度な運動を日常生活に取り入れることは糖尿病の予防に効果的です。そしてストレスは血糖を上昇させるので、ストレスから解放される趣味の時間を作りましょう。ただし趣味のスポーツでストレス解消を目論んでも、勝ち負けにこだわると逆にストレスになるので要注意です。

身体を動かすことを習慣化させると、体調も整い精神も安定してきます。外出時は少しだけ速めに歩く、3階までなら階段を使う、17,00010,000歩を目標に歩くなど、日常生活でも取り入れやすい運動を続けてください。

 

井上 肇

この記事の監修

聖マリアンナ医科大学 特任教授

日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師

井上 肇(いのうえ はじめ)

星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。

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